%コード・イエロー%
『夏夜! しっかりしろ、夏夜!』
ぺちぺちと、誰かに頬を軽く叩かれた。
なんだろう。冷たい掌が、とても気持ちよい。
『亮雅?』
声の主は、私が一番会いたい人。
夢?
きっとそうだ。亮雅が私に会いに来てくれるはずがないもの。
『もう大丈夫。もう一度眠ってろ』
大丈夫って何のことだろうと思っていると、亮雅の優しい手が私の瞼を下ろすように額に当てられた。
体がだるくて、いったんは持ち上げた瞼を私はすぐにおろした。
なんだか心配そうな亮雅の顔が目に入ったような気もするけど、夢の中だから私の都合のいいようにできてるんだろう。
私の良く知るたくましい腕に抱かれて、私の体が心地よい振動を感じる。
・・このまま目が醒めなければいいのに。
幸せな気分が私の体を満たしていく。
ひょっとして、お墓にゆりを供えてくれたのは亮雅じゃないのか。
ふとそう思った。
彼なら、お墓の場所を知っている。
でも、やっぱり違うか。
誕生日だなんて、知らないはずだし。
いろんなことがジャグジーの泡のように次々と心に浮かんでは消えていった。