%コード・イエロー%
「こんにちは、海東先生」
扉の陰から顔を出し、はっきりとした声で挨拶をしたのは里佳子だ。
私が病院に行ったその日に、里佳子には私が知った内容を話してあった。
“K医師”すなわち、姉の主治医が海東であったということを。
私と亮雅だけでは心配だからと、わざわざ休みを取ってついてきてくれたのだが、
里佳子を見た瞬間、海東の顔色がすっとあおざめた。
「き、君は確か」
「はい。大橋里佳子と申します。救急外来看護師の大橋の娘です」
微妙な空気が流れた。鈍感な人間でもそうと気づきそうなほどの。
「彼女は私の友達なんです。今からここで聴く話を他言したりはしません。
あの・・・やっぱり、関係ない人がいてはまずいでしょうか」
亮雅が何も言わないので、私が口を開いた。
今日ここへ来たのは、海東と私が会う段取りを、亮雅がつけてくれたからだ。
もちろん、姉の話をしてもらうために。
決して他言しないから連れて行ってほしいと言われ、ついてきた里佳子だったが、やはり無神経だったろうか。
「い、いや。そんなことはないが。
里佳子さんと言ったね。お母さんは、ここへ来る事を知っているのかい?」
なぜか里佳子の母の事を尋ねる海東が、不自然に思えた。