%コード・イエロー%
「はい。母には伝えてきました」
「そうか」
亮雅は二人の会話を耳にする前に、一人でさっさと奥へ入っていってしまった。
・・里佳子?
なぜだろう。
二人の間に阿吽の呼吸のようなものを感じる。
里佳子は私についてきてくれただけの部外者のはずなのに。
「お邪魔しよう、夏夜」
「う、うん」
里佳子に押されるように、室内へとあがった。
玄関、と言っても、大人4人分の靴を置けばそれでいっぱいになる。
2Kのアパートは、一目見ればそれで全てが見通せるような広さだった。
「ここにお一人で住んでらっしゃるんですか?」
「ああ。妻とは離婚したきりだし、亮雅も、もう大人だしな」
とても医者が住んでいるとは思えない室内は、広さだけの問題ではない。
小さな冷蔵庫。わずかの家財道具。ブラウン管のテレビさえ、この部屋では高級品の部類だ。