%コード・イエロー%
昼前から海東のアパートを訪れていたのに、部屋を出てきたのは夕方に近かった。
わずかに傾いた太陽が、私たちの体を金色に照らしている。
「色々お話を聴かせていただいて、ありがとうございました」
私が頭を下げるのが予想外だったのか、海東は、いや、とぎこちなく返事をした。
「お姉さんのこと、本当に申し訳なかったと思っている」
「いえ、おかげで良く分かりました。姉は一つの原因だけで亡くなったんじゃなかったってこと」
私はもう一度軽く会釈をすると、先に歩き始めた亮雅たちを追いかける。
もしも。
過去にもしもはないけれど。
もしも、を許してもらえるなら。
もしも、姉がもっと早くに病院へ行っていれば。
もしも、柿崎が姉の状態を両親にしっかりムンテラ(患者や家族に対する病状説明)していれば。
もしも、大橋がオンコールをしていれば。
もしも、オンコールの担当が良心的な医師だったら。
姉の命は助かっていたのかもしれない。
もしも助かっていなくても、
少なくとも、裁判にまで発展することはなかったんじゃないだろうか。