%コード・イエロー%
病院の近くは落ち着かないからと、私と里佳子は電車で数駅離れた街に移動した。
スーパーの前は夕方の買い物客でごったがえしていたけど、時間が少し早いこともありレストランの客はまばらだ。
この洋食レストランは二晩煮込んだデミグラスソースで有名な店で、
以前来たときにいっぱいで入れず、次は予約してこようと里佳子と話していた店だった。
「すいてて良かったね」
「うん。そうだね」
相変わらず私と視線を合わせない里佳子。合ってもすぐにそらしてしまう。
今までどんな距離をとって接していたのか。
自然にやっていた行動というものは、意識した時点で前とは同じにできなくなる。
「夏夜」
オーダーが終わると、里佳子が意を決したように顔を上げた。
「ごめんね」
里佳子は唇を真一文字に結んで必死で何かを我慢している。
それが何かわかっていたから、私は風を切る音が聞こえるほどに、必死で首を横に振った。
「里佳子のせいじゃない。関係ないよ。
それにお母さんのせいでもない。あれは、誰か一人のせいじゃないんだよ。
私は、今日それが良く分かったの。だから」
私は身を乗り出して、里佳子の両手を、自分の両手で包み込んだ。
「お願い。ずっと友達でいて」