%コード・イエロー%
少し暗めの店内は、こげ茶色の壁で内装が施されており、
上品なジャズが、会話を邪魔しないほどのボリュームで流れていた。
「夏夜・・・」
かすれた声で私を呼ぶ声が、音楽にまぎれて私の耳に心地よく届く。
「里佳子・・・」
女二人が向かい合ってすすり泣いている姿を見て、周りはどう思うんだろう。
そう考えたとき。
「私たち、別れで揉めてるカップルに見えてるかな」
絶妙なタイミングで、どんぴしゃな言葉が飛んでくる。
ぷっ、と吹き出す私。
私が泣き笑いの顔をすると、里佳子がくすくすと笑い始めた。
「なんかひょっとこみたいな顔」
「ひっど~い!里佳子だってマスカラが落ちてパンダそっくりだよ」
「うそ!?」
「ほんと!」
里佳子の人差し指が黒く汚れたのを見て、二人で大笑いした。
店員がおかしな顔をしていたけど、周りなんてどうでも良かった。