%コード・イエロー%
雪はやむ気配もなく、道路に落ちては次々と黒いしみを作っていく。
まだ積もるほどではないが、このまま朝まで降り続けば明日の朝は交通渋滞がおきそうだ。
病院の裏口に立ったまま天を見上げていると、近づいてきた警備のおじさんに声をかけられた。
「なんだ、傘がないのか?」
それは顔見知りの警備員のおじさんだった。いつも救急外来の入り口に立って、救急車の誘導などをしている人だ。
ちょっと待ってな、というと、彼は病院の警備員室に入っていく。
言われたまま待っていると、おじさんは黒いこうもり傘を持って現れた。
「ほら、これ持って行きな」
「え、でも」
「いいから、いいから。今度来た時返してくれればいいから」
困惑している私に、おじさんは無理やり傘を握らせる。
あまりに人のいい笑顔に、それ以上突っ返せない。
「ありがとうございます。じゃあお借りします。ええと・・・」
彼の胸章にすばやく目を通す。
「西村さん」