%コード・イエロー%
私が名前を呼ぶと、彼はちょっと驚いたような顔をしてから、しわというしわをくしゃ、と縮めて照れたように笑った。
「名前を覚えてくれてるなんてうれしいな。
ここの職員さんは、俺たちを警備員さんとしか呼ばないからな」
「い、え」
名札を見ました、などとは口にできず、私はもう一度傘のお礼を言うと足早にその場を離れた。
“警備員A”そんな風に思っていた自分がたまらなく恥ずかしくなった。
そんな考えを持っていたから、私はいつまでも“受付A”に過ぎなかったんだと思い知らされたような気がして。
駅までの道を、首をすくめてさくさくと歩いた。
白い雪が、私の歩いてきた道を埋め尽くすようにと祈りながら--。