%コード・イエロー%

主役の二人が離れると、招待客の雑談で辺りは急に騒音に見舞われる。


「それでは皆様、こちらへどうぞ」


従業員らしい女性たちが、建物の中へ入るよう招待客に促す。

その雑踏にまぎれて、私は病院のホームページの写真と同じ男の顔を見ることができた。



・・あれが、柿崎院長か。



意外にもひょろりと長身な紳士で、噂で聞くような腹黒い人間にはとても見えない。

その隣で談笑しているのが、多分永井の父親だろう。

会社を経営しながら市議会の議員を務め、次の衆議院選挙に立候補するともっぱらの噂だ。


それはあくまで噂だから、どこまでが本当かはわからないけれど、

今回の件にあの二人が関わっていたのかもしれない、という疑念を払拭できるようなものは何もなかった。



・・永井君、それで本当に幸せ?



嫌味ではなく、妬みでもなく。


私には彼のような生き方が幸せであるようには思えない。

罪の意識がなかったとしても、永遠に不安から開放されることがないんじゃないだろうか。



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