%コード・イエロー%
何を言われるのか。
トクントクンと小刻みに収縮を繰り返す心臓の音が、やけに意識されて。
「お互いの気持ちを確かめるってのは、ちょっと違う。
俺の気持ちに迷いはなかった。何年離れても俺には夏夜だけだと思っていたから。
けど、夏夜は違うだろ。俺に対しての感情は、複雑なはずだ」
複雑、という一言におさまらないほど絡まった糸が、確かに私たちの間には存在する。
ついでに告白しちまうが、と言って、亮雅はひどく真剣な瞳になった。
「実は、夏夜に会ったのは偶然じゃない。俺は最初から夏夜のことを知ってた」
驚きすぎて、声が出なかった。
亮雅は瞳を閉じ、私は息を詰めた。
「俺が牟礼中央記念病院に研修医として入ると決まったとき、柿崎に会ったんだ。
その時、親父が執刀して裁判を起こした家族が働いていると聞かされた」
「柿崎って。院長は、私の事を知ってたの?」
こくりと頷く亮雅。
そんなはずがない。でも、亮雅がうそを言うはずがない。
二つの相反する気持ちが瞬間的に交差したが。
「雇った最初は知らなかったみたいだ。
けど、永井が夏夜の様子がおかしいことに気づいて、身元を調べたらしい。
それから柿崎に耳打ちしたんだ。自分がうまくやるから安心しろって」