%コード・イエロー%
亮雅の言葉はすべて納得のいくもので、私は猛吹雪の中に取り残されたように心が冷えた。
永井とは何度も当直が一緒になった。
あれも偶然ではなかったのだろう。
どこかで私が無意味にカルテ室に入っていることに気づいたのか、
それとも何度もあった会社の飲み会で、酔いにまかせて身の上話を打ち明けたことでもあったのか。
誰にも知られまいと必死だった私は、マジックミラーの中で一人踊るピエロだったというわけだ。
さぞかし滑稽だった事だろう。
「柿崎からは、夏夜の一家が悪質なクレーマーだと説明されていた。
俺の親父の態度が気に入らなくて、手術に難癖をつけているのだと。
だから、最初は夏夜のことを色眼鏡で見ていた。
俺の親父の、いや家族の仇だって」
そうだ。海東の家は、裁判のせいで離婚したんだ。
だから亮雅は、母方の姓を名乗っている。
「俺には親父の生き方は理解できないものだった。
仕送りをしてくれたことには感謝したけど、医者という輝かしい職に就きながら、
貧乏なその日暮らしを送って、日の当たらない緩和ケアにお金をつぎ込んで」
そこで亮雅は言葉を切った。