%コード・イエロー%
私には、亮雅の思いが痛いほど良く分かった。
世間から見ればうらやましがられる医師という職業だが、その中にも階級があるからだ。
脳外科や心臓外科などの外科系は最高ランク。
そして精神科や緩和ケアなど、“治せない医師”が最低ランク。
病院の経営者の考えにもよるだろうが、口で言わなくても医師の中にそういう意識というものが多かれ少なかれあるもので。
柿崎のように院長まで上り詰めた人間と比べ、若い亮雅からすれば、父親が野心のないちっぽけな存在に思えたことだろう。
私は里佳子に目をやると、彼女は真剣な瞳で亮雅の話を聞いている。
私のように驚きの色がないところをみると、知ったのは今日ではないのだろう。
柿崎が知っていたのだとすれば、海東や里佳子の母だって、知らされていたのかもしれない。
沈黙のカーテンが下りる。
タイミングを図ったように、店員が鉄板に乗った大きなハンバーグを運んできた。
ジューという音と肉のこげる匂いが食欲を誘う。
「食べよう。冷めちゃうよ」
無理やり作った笑顔でナイフを握り締めると、亮雅が力強く声を出した。
「夏夜と知り合っていくうちに、俺の中に疑問が生じたんだ。
柿崎の言うことを、そのまますっかり信じていいのかって。
俺の親父は、本当に格好悪いダメ医者なのかって」