%コード・イエロー%

ゆっくりと、顔を上げ、声のする方を振り返る。

そこにいたのは。


「仲地先生!」


まさか。


私は心の中で、叫んだ。

医者が直接カルテ庫に来るなんてこと、絶対にありえない。

医者は、看護士や事務員に、そっけなく頼むだけだ。

それが、けっこう大変な作業だなどと知りもせず、

“この人のカルテ、用意しといて”と。


まさか。


もう一度心の中で叫ぶ。

日本人離れした高い身長に、細身の体。

さらさらの髪の毛が、首筋にかかっていて、妙に色気を感じる。


どう見ても、それは自分の執刀医であった仲地に違いなかった。


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