%コード・イエロー%

「きゅ、救急外来に来た患者様が、2年前にここで手術を受けたことがあるそうで、

その記録を、探しに・・・」


何も聞かれていないのに、私は、用意した台詞をおずおずと口にした。


あとから考えれば、明らかに不自然。

けど、このときの私の頭は、この場を回避することに、いっぱいいっぱいで。

とても、自然な会話なんて、できなかった。


ふうん、と、そっけない態度で、仲地は別の棚に潜る。


どうやら、彼は本当にカルテを探しに来たらしい。

珍しいことだけど、まだ働き始めたばかりで、事務員に頼みにくいのだろうか。


「藤崎さんてさ」


不意に棚の向こうから、仲地の声が響く。


「クラーク(事務員)さん、だよね?」


「は、はい。外来の、ですが」


クラークには、病棟と外来の区別があり、仕事の中身がずいぶんと違う。

私には、病棟の経験がないので、入院に関する事を質問されると困ると思い、

予防線を張った。





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