%コード・イエロー%

「あのさ、このカルテ、学会で使うんで、探したいんだけど」


仲地の手には、小さなメモが握られていて、私は疑いもせず、

仲地のほうへと歩みを進めた。


棚は、すべて、びっしりとくっついていて、

それぞれの端についてあるハンドルを回すと、棚が移動して、棚と棚の間に、人の入る隙間ができる。


そこに入って、初めて必要なカルテを引き出せるような造りになっている。


ほんと、狭いスペースに、なるべく多くのカルテを並べようとする、

細かい日本人の技には、敬服する。


仲地のメモを受けとると、私はそれが置かれている棚を、すぐに探し当てた。


「あ、ここにあると思います」


私の後ろをついてくる仲地に説明し、ハンドルに手を置くと、

私の手に、仲地のそれが重ねられた。


驚いて、体がびくりと反応したが、仲地はまるで無反応で、

これ、回せばいいんだよね、と言いながら、力を込める。



・・やだ。なんか、私だけが、妙に意識してるみたいじゃない!




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