%コード・イエロー%
煌々と明かりが照らされているが、空調までは入れていない。
部屋の温度がどれくらいかわからなけど、やけに蒸し暑く感じた。
「あの・・、すみませんが、私、当直なので、そろそろ戻らないと・・。
もし他に必要なカルテがあるなら、明日、カルテ庫の担当のものに伝えてお持ちしますから」
一人でカルテを探せないのはわかるが、私もそろそろ仕事に戻らなくてはまずい。
仲地にしたって、こんな時刻に、わざわざカルテを探しに来る必要はないはずだ。
ところが、仲地は、ふっと笑ったかと思うと、さらに一歩私に近寄った。
「あ、あの・・」
「患者さんの名前は?」
「え?」
「Q外にかかる患者さんの、名前」
「え、ええっと、確か・・」
そんなことまで聞かれると思ってなかったから、答えを用意していない。
とっさの機転が利かない私は、自分でもまぬけだと思う答えを口にした。
「さ、佐藤さんです」
全国に、およそ50万世帯あると言われる、日本一多い、無難な苗字。