肝だめし
肝だめし
お題「きもだめし」 雛×玲樹
「わぁッ!?」
さっきから俺の後ろで悲鳴が聞こえる。
その相手は勿論、彼女の雛だ。
お化け屋敷に雛を連れて来たのは、
間違いだったと後々気付く。
これで3回目だが、彼女の手をひっぱって自分の横を歩かせる。
その手を雛はしっかり握ってついてくる。
そんな雛の姿を見て、自然と顔が綻んだ。
無言のまま、薄暗い道を歩いて行く。
……。
…………。
雛は俺の横でガタガタと震えている。
さっきまでは、そんな可愛らしい雛の姿にほほえましくさえ思えていたが、
段々と可哀相にも思えてきた。
「大丈夫か?」
「う…うん、だいじょ…ぶ」
大丈夫ではなさそうなのが、あからさまにわかる。
「ごめんな…こんなとこ連れてきて…」
「ううん…平気だよっ」
「なぁ、雛」
「ぅん…?」
「ちょっと、目ー閉じてみ?」
「え…怖いよ…置いていかない…?」
「置いてかないから」
「うん…わかった」
そう言うと、雛はゆっくりと目を閉じた。
雛の顔に、そっと自分の顔を近づける。
「…んなっ!?」
「怖くなくなる、おまじない」
ニヤッ
少しの間、沈黙が流れる。
「まだ、怖いか?」
「ううん…」
「じゃ、行くぞ?」
「うん!」
――――
「ぁ…出口だな」
ぼそっとそう呟いて、少し早足になる。
すると、後ろから握っていた手を引っ張られた。
「どうした?」
「まだ、外出たくない…」
その言葉の意味が、一瞬わからなかっが、
真っ赤になった雛の顔からすぐに察しはついた。
「もう怖くねーのかよ?」
意地悪っぽく、笑いながらそう言ってやった。
彼女は顔をより真っ赤にして頷いた―
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