准教授 高野先生の結婚

実家に帰るのは夏休み以来のこと。

お父さんもお母さんも“待ってました!”とばかりに寛行さんを笑顔で迎えてくれた。

当然“果たし合い”になんてならないことはわかっていたけど、なんだか……。

「やあ、寛行君。さあ、あがってあがって。道路は途中混んだりしなかったかい?」

お母さんはともかく、正直なところ、お父さんの様子には拍子抜け。

だって――

前に……初めて寛行さんが来たときは警戒心丸出しのノラ猫みたいだったのに。

今、寛行さんをリビングへ案内しつつ楽しげに会話しているお父さんは余裕な感じで。

私は声を潜めてお母さんに聞いてみた。

「お父さん、やけに落ち着いてない?」

「うっふふっ~、そう見える?」

お母さんが、さも意味深にニヤリと笑う。

「えっ!何?ねぇ?どういう意味???」

「あのね、務さんったら今日一日ずぅーっと落ち着かなかったんだから」

「今日一日って、朝からずっと???」

「そっ。何をやってもソワソワ落ち着かなくて。クマみたいに家の中をウーロウロ」

「そうだったんだ……」

お父さん、やっぱり……。

私はちょっと胸がつまって、お父さんのその背中を切なく見つめた。

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