准教授 高野先生の結婚
弾丸ツアーも、いよいよあとは帰還のみ。
以前と同じように、お父さんとお母さんは外まで見送りに出てきてくれた。
「もぉ~、二人とも泊まっていけたらよかったのにねぇ。ざーんねん」
お母さんが、ちょろっと拗ねた素振りを見せる。
そりゃあ、私だって……。
本音を言うと――
とてもとても名残惜しくて、出来ることなら泊まっていきたい気分だけど。
でも――
「月曜日に、先生に修論の指導をしてもらう約束なの。明日はその準備をしなきゃ」
寛行さんもちょっと片付けたい仕事があると言っているし。
色々と事情があるのだもの、仕方がない。
「じゃあ……行くね、そろそろ」
「しーちゃん!着いたら――」
「わかってるよ。お母さんに“無事に着いたよメール”、でしょ?大丈夫だよ」
なんか、ちょっとうるうる……。
けれども、私なりに頑張って精一杯の笑顔を見せる。
「1月のお食事会のこと、またちゃんと相談させてね。早めに連絡するから」
そうして、私は年末にはまた帰省することを約束して、実家をあとにした。