准教授 高野先生の結婚

弾丸ツアーも、いよいよあとは帰還のみ。

以前と同じように、お父さんとお母さんは外まで見送りに出てきてくれた。

「もぉ~、二人とも泊まっていけたらよかったのにねぇ。ざーんねん」

お母さんが、ちょろっと拗ねた素振りを見せる。

そりゃあ、私だって……。

本音を言うと――

とてもとても名残惜しくて、出来ることなら泊まっていきたい気分だけど。

でも――

「月曜日に、先生に修論の指導をしてもらう約束なの。明日はその準備をしなきゃ」

寛行さんもちょっと片付けたい仕事があると言っているし。

色々と事情があるのだもの、仕方がない。

「じゃあ……行くね、そろそろ」

「しーちゃん!着いたら――」

「わかってるよ。お母さんに“無事に着いたよメール”、でしょ?大丈夫だよ」

なんか、ちょっとうるうる……。

けれども、私なりに頑張って精一杯の笑顔を見せる。

「1月のお食事会のこと、またちゃんと相談させてね。早めに連絡するから」

そうして、私は年末にはまた帰省することを約束して、実家をあとにした。
< 108 / 339 >

この作品をシェア

pagetop