准教授 高野先生の結婚
ロビーへ降りる前に事の次第を寛行さんにメールした。
もっとも、すぐに返事はこなかったけれど。
幸い今夜は何処か適当に外で食事をしようと話していたし。
彼に無駄に夕食を作らせたりせずすんでよかった。
並木先生が“行きつけの美味い店”と言い連れて行ってくれたのは――
私にはちょっぴり懐かしく、そして、とても思い出深いお店だった。
並木先生のあとについてのれんをくぐって中へ入ると――
「いらっしゃいませ。お連れ様はもうお見えですよ」
「あらそう。奥でいいんだよね?」
「はい。どうぞごゆっくり」
奥というのはお店の奥のほうに一つだけあるお座敷のことらしい。
それにしても、お連れ様って???
「もう来てるみたいだね」
「あの、先生……?」
「君の彼氏」
「ええっ!!」
な、なんですとぉ!?
並木先生の様子がどうもおかしかったのは“こういうこと”だったとは……。