准教授 高野先生の結婚

エレベータを降りると美味しそうなカレーの匂いがほのかに私の鼻をかすめた。

今夜は楽しいうちご飯。

今夜は美味しい彼カレー。

私はまるでカレーの匂いに釣られるように彼のうちへびゅーんと素早く吸い込まれた。

「ただいまなさーい」

「おかえりなさーい」

久しぶりの夜だけど変わらない、いつもの二人のいつもの挨拶。

「あのね、エレベータのほうまでカレーのいい匂いがしてたよ」

「あ、カレー臭ただよってた?」

まったく、この人はまたそうやって……。

「もう、わざとへんな言い方する……」

「ん?カレーのにおいでカレー臭?」

カレーと加齢をかけているのはわかるけど。

「それ、正しくないじゃないですか」

「うん?」

「ナントカ臭って言うときは悪い臭いのときだもん。いい匂いのときは使いません」

私は彼をたしなめると、その可愛いエプロン姿にぎゅーっと抱きつき頬を埋めた。

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