准教授 高野先生の結婚
並木先生はまるっとすべてお見通しで、私は小さくなるばかり……。
「あのね、鈴木さん。人って頼られることで救われる部分もけっこうあるわけよ。
そりゃあ程度や頻度にもよるけど、頼りにされるのってそう悪い気はしないでしょ。
もちろん、ただ都合よくいいように利用されるのは気分悪いし御免だけどさ。
社会に出てから肝要なのは、頼ったり頼られたり出来る人間関係をちゃんと築くこと。
なにせ人間いいときばかりじゃないからね。
貸しを作れるばかりじゃダメでさ、借りも作れるようじゃなきゃ。
だからね、持ちつ持たれつ?貸し借りのできるオトナになってちょうだいよ」
先生の指摘は何もかも的を射たことばかり。
そして、それは正直私にとって耳の痛いことばかり……。
「私、恵まれた環境の中で自覚なしで周りの人に甘えていたんですね、ずっと……」
「君の長所は長所として。でも、これからは少し考えなさいよってこと。ね?」
そう言って先生はニコッと笑うと、冷めているであろうコーヒーを飲み干した。
並木先生は厳しいけれど温かい。
先生が私を思って敢えて言って下さったのがわかるから。
だから、私は先生の助言を素直にあり難く受け取って早速実践を試みた。
「あの……真中君、桜庭さん。私、やっぱりどうしたらいいか困っていて……。
だから……相談してもいいですか?協力してもらってもいいですか?」
すると、頼まれた真中君と桜庭さんは――
「遅いよ、シオリンは。いつまで黙ってればいいのかヤキモキしてたんだからな」
「まあまあ、真中クン。晴れがましいのが苦手なシオリンの為に三人で考えようや」
二人とも頼もしい笑顔で、どんと請合ってくれたのだった。