准教授 高野先生の結婚

駐車場はマンションから少し離れた場所なので、いつも移動が面倒くさい。

雨降りの朝などは特に億劫で、二人をげんなり萎えさせる。

でも――

今夜ばかりは、この道のりが嬉しくて、なんだかうきうき得した気分。

「トナカイ、今夜は配達の仕事でてんてこまいだね」

「そうだね。何しろトナカイ不足で手が足りて無いからねぇ。きっと大忙しだ」

「あまりの忙しさに目をまわしたりしてないかな?」

「いや、雪が降ったおかげで俄然はりきって燃えているに違いない」

「そうなの???」

「そっ。“雪の夜空をそりを牽いて駆けるオレ、カッコいいだろ?”ってさ」

「そういうキャラだったんだ……」

「そういうキャラでした。彼はそういう奴なのさ」

うーむ、このまえ聞いたトナカイとは別人……別トナカイ?のような気が……。

まぁ敢えてそのへんはつっこまないけど。

まったく……“気にしい”な弱気なトナカイは何処へやら。

「ところで……どうだった?忘年会は」

「寛行さん、わかってるくせに」

「並木先生が助けてくださったんだね」

「そういうこと。老練なキューピッド様、それはもう大活躍だったんだから」
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