准教授 高野先生の結婚
9.贈りあうこと、守りあうこと

学生最後の冬休みも明日でおしまい。

帰省先からY市へ戻る車中――

「ふにゃ~。なーんか“てんこもりもり”の冬休みだったね」

「まったくね。三が日のあと急にばたばたと忙しくなってしまったからなぁ」

「ほんとにね。まさか私いきなり振袖を着ることになるなんて思わなかったし」

「僕だって。実家へ来て慌ててスーツを新調することになろうとはさ」

「ねー」

「ねー」

寛行さんと私は帰省先での怒涛の何日間を振り返っていた。

私は上げ膳据え膳のお気楽実家ライフを満喫するはず、だったのに……。

いったい何があったのかというと――

「けどさ、僕の両親も君のご両親も安心してくれたみたいでよかったよ」

「うん。私もね、すごく急で忙しかったけど早く終わってほっとしたかも」

「僕もよかったと思うよ。調整に手間取って先延ばしになるよりもさ」

「これで一応“両家の顔合わせ”完了?」

「うん。完了完了、大成功」

なんと!

私たちは帰省している間に親同士の顔合わせを済ませてしまったのである。

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