准教授 高野先生の結婚
私とて別に“絶対死んでも振袖は着ない!”なんてつもりじゃなかった。
ただ――
いくら主役?とはいえ私一人だけやけに華やかな格好だと浮いちゃわない?とか。
窮屈でかしこまった和装だと、それだけで妙に緊張しちゃいそう、とか。
私が着物を着ると七五三みたいで……かえって子どもっぽく見えちゃうかも?とか。
もちろん、振袖にこだわるお母さんの気持ちもわからなくはなかった。
だって――
実は、私が成人式のときに着た振袖はお母さんから譲り受けたものだから。
その昔?お母さんも成人式で着たという、ちょっとした歴史のあるものだから。
だからこそ、留袖を着るようになる前にもう一度袖を通して欲しいのかな、と。
まあ、それはそれで嫌ってことはないけれど、でも……。
私には私なりのプランもあったし……。
「お母さんは“これがあの振袖を着る最後の機会だから~”とか言うんでしょ?」
「そ~よ~。これがラストハンターチャンスなんだから~」
「ハンターって……」
「まあまあまあ。とにかく、いくら若くても既婚女性は振袖着ないんだからね」
「でも……訪問着とかに仕立て替えしたら?結婚してからも着られるよね???」