准教授 高野先生の結婚
そんなこんなで、お母さんの思い出の振袖に身を包み晴れの良き日に臨んだ私。
お食事会のときの写真は、ちょっとした写真館で撮ったような出来映えだった。
「これ撮ってくれた人すごいねー。二割増しでキレイに写ってる気がするもん」
「あの人はお店の支配人で、母さんの麻雀友達の旦那さん。写真が趣味なんだって」
「へぇー、そうなんだぁ。やっぱり普段から撮ってる人だったんだねー」
「記念写真を撮ってもらえるなんてさ。なんか思いがけないサービスだったよね」
「うん!あのお店でよかった!」
「料理も美味しかったし。少しボリュームはありすぎだったけど……」
「あと、まあるいテーブルもよかった気がする。みんなで食卓を囲んでいる感じで」
「そうだね。両家で対面(といめん)で向かい合うより良かったかもしれないね」
「寛行さんのお母さんに感謝だね。中華で正解!って」
「まあね、あの人がそういうつもりでわかって勧めたようには思えないけどねぇ」
「もう、失礼な……。けど、本当に大正解だよ。正座しなくてすんだし!なーんて」
「僕としては――」
「ん?」
「やっぱり君が振袖を着てきてくれたことが大正解……大当たりって感じだな」
「えっ」
「“こいつぁあ春から縁起がいいや”なんて……すごく似合っていて綺麗だったよ」
「そんなこと……」