准教授 高野先生の結婚
寛行さんは穏やかに笑いながら、ちょっとした心境の変化について話してくれた。
「僕ね」
「ん?」
「今まで結婚式や披露宴の意義について懐疑的だったんだけど――」
「だけど?」
「ちょっと考え方が変わったかなって」
「どういうふうに?」
「儀礼的なことも大事なんだなって。時には必要なものなんだって」
「この間の結納……じゃなくて、顔合わせで?」
「うん。すごくいい区切りになったと思うんだよ。
“けじめをつける”なんて言い方、この場合は少し違う気がするけれど。
それでもさ、あらためて実感するいい機会になったと思うんだよね。
僕らはもう“彼氏彼女”ではなくて、その次のフェーズにいるんだってことをさ」
ちょっと、びっくりした……!
だって、実は私もまるっと同じことを考えていたから。
彼と私、互いの両親が喜びあい安心しあう様子を見て思ったのだ。
これでようやく“きっちりすっきり整ったんだ”って。
“押しも押されもせぬ”婚約者になれたような、そんな気がして。