准教授 高野先生の結婚

彼が同じように感じて思っていたことが嬉しかった。

すごく歩調があっている気がして。

ちゃんと一緒に歩めているんだなって。

「これからは君のこと“婚約者です”って自然に紹介できるような気がするんだ」

「自然に?」

「あっ、それまでだって結婚に迷いがあったわけじゃないんだよ。でも……」

「なんとなくわかる気がする、寛行さんのその感じ」

「え?」

「私もね、なんとなくバイト先の人にはまだ結婚すること言えてなくて……。

私だってね、二人が心変わりしちゃう心配なんてぜんぜんしたことないし。

お父さんやお母さんが急に考えを翻すこともないだろうって安心してたし。

なのに、なんだけど、なんとなく……」

「そっかそっか」

「私もね、思ったの。カタチばかりに拘るのは違うと思うけど、でも――」

「時には何かカタチにして表すことも大事なんだよね」

「うん」

結婚において何よりも大切なのは二人の気持ち。

だけど――

一席設けて家族同士が挨拶を交わすことも。

晴れがましく結婚式を挙げることも。

披露宴で華やかにお披露目をすることも。

約束の証の高価な指輪も。

振袖を着るのを卒業(封印?)することも。

みんなみんな大事な節目を表すカタチ。

新しい一歩を力強く踏み出す為の決意表明なんだ。




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