准教授 高野先生の結婚

Y市へ戻って冬休みが明けるとすぐ、寛行さんと私はそれぞれ行動を開始した。

さしあたっての重要な任務?は、なんと言っても挙式会場の確保!というわけで――

その件は、寛行さんが大学の宗教センターの窓口に直接出向いて相談することに。

そして、私のほうはと言うと――


彼が仕事始めの出勤をしたその日。

私は私で自分の任務を遂行すべく学部時代からの友人“カスガイ”と会っていた。

「ひょ~、懐かしいのぉ~。ゼミのあとにスズキとよく来たこのファミレス」

「カスガイは必ずいつもでっかいプリンがのったパフェ頼んでたよね」

「んあ?今日も頼むけど?」

「相変わらずだなぁ」

二人で通った馴染みのファミレス。

ちょっと薄汚れた内装も、窓から見える街路樹の風景もあの頃のまま。

“魅惑のスペシャルプリンパフェ”もメニューに堂々健在だ。

だけど――

「あのさ、“カスガイ”」

「んあ?」

「今さらなんだけど……やっぱり旧姓で呼ぶのやめたほうがいいよね???」

パフェを注文する彼女はもう“カスガイ”じゃない。

今は結婚して“タケイ”なんだもの。

けど、なんとなーくズルズルと今までずっと旧姓のまんま呼び続けていて……。

とりあえずケータイのアドレス帳だけ“竹井 愛”に変更済みってくらいで……。

うーむ、名前じゃなくて名字で呼んでた友達ってむずかしい。
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