准教授 高野先生の結婚
やっぱり、私はバカだ……。
だって、この状況下であんな言い方――
「付けて欲しいの?」
「えっ」
“どうして付けてくれないの?”って、催促してると同じだもん。
こんな好機?を彼が逃すはずも無く――
彼は私に透かさず意地悪くつけこんだ。
「違うの?そうじゃないの?」
それはもう悔しいくらいに余裕綽々のニコニコ顔で。
「詩織ちゃん?」
「そんな、こと……」
彼はいつも私の気持ちを大事にしてくれる優しい人。
だけど――
とてもとても優しいけれど、同じくらい……とてもとても意地悪だ。
“君しだいだよ?”
“君にまかせるよ?”
そうして彼は時として、私が困るとをわかってて、わざと私に決めさせる。
「どうなの?詩織ちゃん?」
「どうって……」
「ん?」
「そんなの、わかんないです……」
問い詰められて追い詰められて、逃げ場のない私は苦し紛れに腕で顔を覆い隠した。