准教授 高野先生の結婚
“わかんない”なんて、まるで幼い子どもの常套句だ。
でも――
自分でもホントにちょっとわからなくって。
欲しいのか?欲しくないのか?と聞かれると、なんだか答えに困ってしまう。
だって、積極的に“付けて!付けて!”というわけじゃなし、
かといって、“今後も絶対に付けないでくれ給え”というわけでもなし。
ただ――
「付けて欲しいって訳じゃないけど……」
「けど?」
「ただ……」
「ただ?」
「付けてくれてもいいのに、って……ちょっと……そう、思っただけ」
……なんか、よくわからないけど、今度はやけに甘えた言い方になっていた。
言葉って――声に出して発することって、やっぱりすごく特別なんだ。
きっと、声音の音は心の“音”を響かせて、声色は心の“色”を映すから。
頭の中の独り言は、ちょっぴり甘い熱を帯び、切なく響く甘美な台詞になっていた。