准教授 高野先生の結婚
翌日以降も、私は自分で立てたお式の準備のスケジュールを“こなして”いった。
“一人”で、“淡々”と、“黙々”と。
ただ着実に予定を“消化”していく日々。
一人で考えて、行動して、一人で決めて。
彼には意見を求めなかった……。
もちろん、確認をとって了解を得るという手順はきちんと踏んではいたけれど。
そんなの形式なもので、彼が私の考えに異論を唱えることなどなかったし。
バイトの時間以外は、お式の準備のことばかり。
それはまあ、目下の関心事だし、今一番やるべきことだから当然っちゃ当然だけど。
正直、ちょっと意固地になっているのだ。
“結婚式をしたかったのは私ですもんね!ハイハイ、だから自分で頑張りますよ!”
……みたいな?
彼にはもう相談するまい!などと、頑なに一人で準備に没頭するという……。
だから、おうちの中でも彼に素直に接することができなくて。
無視し合っているわけではないのだけれど、なんとなくそっけなく言葉少なで。
夜は夜で“疲れたから先に寝るね”と私はさっさと一人で休んでしまうし。
彼は彼で、苛立ちをぶつけてくるわけでもなく、懐柔策にでてくるでもなく。
家の中はなんとも居心地の悪い微妙な空気。
もちろん、そういう状況を作っているのは私なわけなんだけど……。
そんなこんなの日々が、かれこれ5日間ほど続いていた。
「今日の夜、外でご飯食べよう」
「え?」
それは、私の誕生日を翌日に控えた朝のことだった。
“食べようか?”と私の意向を聞くのではなく、ほぼ決定事項の伝達というか……。
「バイト先の近くのあのコンビニで待ってるから」
「う、うん」
彼らしくないものの言い方に少し戸惑うも、彼の表情はいたって穏やかないつもの感じ。
「じゃあ、今夜。いってきます」
「い、いってらっしゃい」
寛行さん、いったいどういう……???
私はちょっと困惑しつつ、彼がにっこり微笑んで仕事へ出かけていくのを見送った。