准教授 高野先生の結婚

お母さんの話だと、性格も寝姿も子どもの頃からあまり変わっていなそうな寛行さん。

そりゃあ子どもの頃は、それなりに?無邪気でやんちゃなとこがあったに違いない。

保育園時代の“同じ組の女の子にチューした事件”なーんてエピソードもあるし。

それにしても、子どもの頃から要領が悪かったなんて。

その様子が簡単に想像できてしまうようで。

ご本人には申し訳ないけれど、その“らしさ”がまたなんともかんとも……。


「寛行は兄弟の中でもやっぱり要領が悪くてねぇ。いつも貧乏くじ引いてたわぁ」

「貧乏くじ、ですか?」

「そっ。なーんか損な役回りになるの」


一人っ子の私には兄弟ゲンカとかそういうのが生々しく想像できないのだけど……。


「例えば、そうねぇ……三人で悪さしても何故か寛行だけ逃げ遅れて捕まるとか」

「はぁ」

「お菓子なんかで早い者勝ちで好きな物を選ぶときも、やっぱり遅れて――」

「残り物、ですか?」

「そっ。でも、たまに残り物に福があったりするじゃない?」

「はい」

「けど、そういうときは透かさず友和に奪われたりするわけ。兄の特権みたいにね」

「え~!そんなぁ!」

「あと、正義が欲しいって暴れて、泣くなく譲るはめになったり。末っ子の強みね」

「うぅ、そんなことって……」


きょ、兄弟って大変なんだ。

あぁ、寛行さんてば……なんて不憫な!


「寛行ってねぇ、真ん中っ子ってどうしてもそういう風になっちゃうのかしらねぇ」

「真ん中っ子?そういう風って、どういう……???」

「ほら、いくら寛行が理屈っぽくても兄の友和にはさすがに叶わないでしょ?」

「それは……ですよね、はい」

「で、正義は末っ子で甘え上手で押しが強いの。我がままに強情張れるっていうか」

「それじゃあ、真ん中の寛行さんは……」

「いつも何処かちょっと引いてて、守りに入ってる感じがあったかしらねぇ」

「えっと……それって……???」

「なんていうかねぇ、兄弟の中でちょっとポツンと浮いてるというか、ねぇ……」

「……」


うーむ……。


< 269 / 339 >

この作品をシェア

pagetop