准教授 高野先生の結婚

おそらくは、ずっとずっとこれからも吸引性皮下出血とは無縁と思われる私たち。

ぎゅっとぎゅっと、ぴったりひっしと抱き合いながら、

彼はキスマークを付けないホントの理由をちゃんと私に教えてくれた。

「内出血が嫌っていうのも冗談なんかじゃなくて本当なんだよ。

大袈裟かもしれないけど、きれいな肌に傷つけちゃうみたいでなんか、ね」

「そんな、たいそうなものでは……」

「たいそうなものでしょ?ご両親からいただいた大事な体なんだから」

「あぅぅ、お説教だ。っていうか、こういうときに親の話は反則なんじゃないの?」

「おっとっとっと、そのとおり」

「で?なんでキスマークつけないの?」

「うん。まぁ、僕はああいうことをしたがるほど若くないってのもあるんだけど」

「えーっ」

「だってさ、あんなふうにしるしをつけて“俺の女だ”みたいに主張するなんて、

きっと若い男の子が粋がってすることでしょ?まぁ、一概には言い切れないけど」

「ふーん、そうなのかぁ」

「それにね――」

「ん?」

「君にキスマークを付けないのは――」


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