准教授 高野先生の結婚

早々と寝る支度を済ませてからしばらく。

彼は寝室で読書、私はパソコンでネット。

就寝までの時間を思い思いにすごす二人。

語らっていなくても、触れ合っていなくても、互いの空気を確かに感じられるから。

温かな沈黙が心地よい。


ぼちぼち時間かな?と思って、ドアの陰から寝室の中をそーっとそーっと覗き込む。

ベッドの上で壁を背もたれがわりにして、静かに読書に耽る彼。

とりあえず、忍び寄る私の気配には気づいていないようだ。

さて、どうしたものか……?

普通に声をかけるのもつまらないような。

ここはひとつ試してみようじゃないか。

私の熱視線?に彼はどれほど早く気づけるのか!?なーんて。


いざ、愛の念?を送信開始。


やや俯き加減で手元の本に集中している彼の横顔。

手早く、だけど丁寧にページを繰る手。

商売柄というか、彼はけっこう速読が得意。

でも、本当は精読派なのを私は知っている。

速読しているときは大抵いつも仕事の本。


こうして本を読んでいる彼を見ているのがけっこう好きだ。

別に読みながら表情がころころ変わるとかでもないのだけど……なんかイイ。

見つめていると、なーんかしあわせーな気持ちになる。

おっとっとっと……。

今はいいかげんこの視線に気づいてもらえないと困るのだけど。

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