准教授 高野先生の結婚
“高野詩織”になったからといって、いきなり何かが劇的に変わるわけもなく。
私はやっぱり私のまんま。
彼も、彼は彼で彼のまんま。
脱ぎっぷりの悪さも相変わらず。
人のは脱がすくせに、自分はなかなか脱ごうとしないのだから。
「むぅぅ……こんな日なんだから、景気よくババーンと脱いでくれてもいいと思う」
「結婚記念日サービス?」
「そうそう」
「嫌だよ。毎年の恒例になったらかなわない」
「えー」
「これから年老いてどんどん貧相なカラダになってゆくというのにさ、よよよ……」
「またそういうこと言う……」
世界中の新婚さんは、夫婦になって初めての夜にいったい何を語り合うのだろう?
たぶん、脱ぐ脱がないの話じゃあないとは思うけど。
そういえば、ウェディングドレスを選びに行ったとき、柘植さんが教えてくれたっけ。
外国のどっかの国では花嫁さんは結婚式からその夜までずっとドレスを着てるって。
で、それを脱がすのは花婿さんなんだって。
ま、私は式が終わったらすぐウェディングドレスは返しちゃうからあれだけど。
結婚式って、役所に紙出すだけの入籍日よりよっぽど記念日っぽいかも。
って……???
入籍日が結婚記念日なら?結婚式の日って何になるんだろう?
どっちも結婚記念日?
いやいやいやいや、まさかまさか、結婚記念日は一つだろうし……。