准教授 高野先生の結婚
なにしろ堪え性のない私はすぐにでも封を開けて中の手紙を読みたくなった。
けれども、逸(はや)る気持ちを抑えておさえて、うちへ着くまで我慢がまん。
だって、今ここでハサミが無いからといって端っこを破いて開けるなんてこと……!!
そんなぞんざいな扱い、一生の宝物になる大事な手紙に絶対したくはなかったから。
一瞬、何処かでハサミやカッターを買うなり借りるなりするという手も考えた。
だけど、これはきっと――
“うちへ帰って落ち着いてゆっくりと読みなさい”
そんな神様の思し召しに違いない……などと思いなおし、私はまっすぐ家路を急いだ。
帰りのバスの中、バッグから何度も手紙を取り出しては、
表を返し裏を返し、読む前に穴でも空いてしまうのではないかと思うほどそれを眺めた。
ときどき窓の外の日の光にかざしては、少しでも中身が見えないかと試してみたり。
そんなことをしたとて手紙の内容が透けて見えるなんてことあるはずないのに。