准教授 高野先生の結婚
夕食の間の話題は専ら新婚生活とお式の段取りのことばかりだった。
とりあえず、共働きの夫婦なりに家事を分担してうまくやれていることや、
私が新しい姓にも少しずつ慣れつつあることを報告すると、
お父さんもお母さんも、嬉しそうに安堵の笑みを見せてくれた。
「あ、そうそう!お式の日はお父さんだけちょっとリハーサルがあるからね」
「ぬっ、何!?」
「あのね、新婦と一緒にバージンロードを歩く練習をするんだよ?」
「しーちゃん……きゅ、急にそんなことを言われても、だ……」
「だからね、急にだとあれだと思って今こうして言ってるんでしょお?」
「いや、その……」
「だって、練習も無しにいきなり本番なんて無理でしょ?私は絶対無理だもん」
「しーちゃーん、私は?」
「ん?お母さんは何もないよ?」
「えーっ、つまんなーい」
「そんなこと言われても困るし」
「いっそ、ユキちゃんに代われるものなら……」
「もう!お父さん!」
「務さんばっかり~」
「あの……お母さんは、お父さんと詩織ちゃんのリハーサルを見守る重要な役どころということでどうでしょうか?」
「あら、重要な?」
「そうです。たいへん重要です。お母さんが見守ってくださるだけで、きっと元気百倍、勇気凛凛です」
「私ってば女神様?」
「そうです、そのとおりです」
「うふふ~、いいかも」
お母さん……。
女神様っていうより、焼きたてのアンパンとか?パン焼き名人とか?そういうのが頭に浮かんでしまうのは私だけ?