准教授 高野先生の結婚

行為の後の心地よい気怠さ……これってまさに「至福だなぁ」としみじみ思う。

私は“まんま”の恰好でまったりしつつ、彼を見上げて話しかけた。


「ぐぅぅ。お腹が空きました……」

「あらら。小腹が空いた?」


それにしても、いつもながら彼の仕度の早いこと。

一人だけもうパジャマだし。


「あ、そういえば……。僕、母親から“二人で食べなさいね”ってお土産を持たされていたんだよ」

「わーおっ。きっと美味しいものだ!」


食べ物と聞くやいなや勢いよくとび起きる私の現金なこと……。

すると、透かさず彼に釘をさされた。


「ちゃんとパジャマ着てからね、食べるのは」


むぅぅ、面倒くさい……。

でもまあ仕方がないか。

とりあえずパンツはどこかと辺りを見回すと――。


「なんですか、これ……」

「何って、君がはいてたパンツでしょ?」


パソコンデスク(今はほとんど使われることなく物置と化している)のイスの座面に置かれているのは確かに私のパンツ。

しかも、疲れたみたいにくったりとした……。


「んなことはわかってますよ!」


はいてた本人ですからね、わからないわけないでしょうよ。

私が問いたいのはパンツの扱いというか、このありさまのことだ。


「まったく、どんな羞恥プレイですかっ」

「えー。だって、君がいつもパンツが行方不明になるって言うから」

「だからって……これじゃあまるで憐れなパンツの標本ですよ」


まったく、わざわざこんなご丁寧に広げておかなくてもいいじゃない。


「隣に煙草の箱でも置きたいところだね。スケールがわかるようにさ」

「ひーろーゆーきーさーんーー」


そもそも煙草の箱なんて我が家に絶対ないじゃない。

それにしても、彼がこんなことしていたなんてちっとも気づかなかったし。

私ってばもう、どんだけ一人で忘我の境をさまよっていたんだか……恥ずかしい。
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