准教授 高野先生の結婚
うちへ着くとすぐ、私はうがいも手洗いも忘れてペン立てのハサミを手に取った。
気持ちソワソワ、もう待てなくて。
心ワクワク、楽しみで。
だけど――
やっぱりドキドキ、緊張する……。
この手紙がいったいどういう手紙なのか?
私はそれをよく知っているはずなのに。
そもそも、私が彼に催促をした手紙なのに。
来たるべき“その日”の前に心の準備をする為におくってもらったはずなのに。
なのに――
緊張でちょっぴり心が震えてしまう。
不安や怖れとは違う何か厳かな緊張感。
彼の想いと決意が綴られたこの手紙。
読む前からその畏れ多い重みにかしこまりながら、
私は慎重に慎重にハサミを入れ、丁寧に丁寧に心をこめて封を開いた。