准教授 高野先生の結婚
電話を取った人はご実家と同じ市内に暮らしているという弟さんだった。
そして――
「あ、父さん?ちょっと相談があるんだけど、今話しても大丈夫?」
その電話は、お母さんではなくお父さんに取り次がれた。
電話とはいえ家族と話している寛行さんを見るのは初めてのこと。
私と接するときとも違うし、同僚や友人と接するときとも何かが違う……。
私の知らない初めて出会う彼の表情(かお)は、なんだかとても新鮮だった。
寛行さんは何を言いよどむこともなく、さくさく事の次第を説明していった。
すると、どうやら話はあれよあれよと、どんどんどんどこ進んでいって――
「あ、そう、日曜は母さんが都合悪いんだ?それで??28日の土曜日???」
あっという間に候補の日取りが急浮上。
土曜日だけど、その日はちょうどシフト変更を頼まれていてバイトはお休み。
なので、“君の都合は?”とこちらへ視線をよこした彼に私はこくこくこくと頷いた。
それにしても――
たまたま偶然バイトが休みだなんて……。
急に持ち上がった話だったのに、こんなにあっさり進展しちゃうなんて……。
大袈裟かもだけど、私はその日になんとなく運命的なものを感じてしまったのだった。