准教授 高野先生の結婚

今日は折悪しく天気は朝から雨模様。

目的地に着いたのは11時を少し過ぎた頃。

小降りになったものの雨はいぜんとして降ったままだった。

「砂利になってるから足元に気をつけて」

「うん」

車を降り、傘をさして玄関先へと彼の後につづいて歩く。

高い木のある広いお庭。

古いつくりの瓦屋根の大きなお家。

寛行さんのご実家は、どこか素朴で落ち着いた田舎の雰囲気が漂っている。


さて、いよいよ本日の遠足の目玉、動物園?にご入園である。

彼が、ガララララッと玄関の引き戸をゆっくり開ける。

「ただいまー」

すると、その音を聞きつけて――

奥のほうからドドドドドッと足音立てて、男の子が一人、猛スピードでかけてきた。

そして、男の子は寛行さんには目もくれず神妙な面持ちで私を見上げていきなり一言。

「ヒロユキのカノジョでござるか?」

ご、ござる……!?

私は早速、高野家の洗礼を受けてしまったのだった。

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