准教授 高野先生の結婚
楽しい遠足、楽しい動物園……。
っていうか――
っていうよりも――
ここは何処?映画村か??江戸村か???
思いがけない“武士”の登場に、面食らってやや固まる。
が、しかし!
こんなところで怯んでばかりはいられない。
私はシャキーンと気を取り直し、挑むように武士に答えた。
「い、いかにも……!彼女でござる」
すると、武士は――
「うむ。あいわかった」
「へ?」
「では、これにてゴメン」
「は?」
今度は何やら叫びながらダダダダアッと廊下を走り去っていった。
――ハハウエー!ヒロユキまいってるよー。
参る、って……。
それはそうと、どうやら廊下の奥には武士の御母堂様がおいでのようである。
――カノジョもまかりござってるー!
罷(まか)りござる、って……。
使い方が合っているかは別として、小学生がよくそんな言葉を知ってるもんだ。
ところで。
聞くまでも無いけど一応彼に聞いてみる。
「寛行さん、今の武士はどなた?」
「拙者の甥、望(ノゾム)でござる」
「……」
いつのまにやら、ここにも武士が約一名。
甥が甥なら、叔父も叔父。
血は争えないとはこのことか。
高野家の人々……お目にかかるのが楽しみなような、恐いような……。
私は、くつくつ笑う彼を見ながら曖昧で微妙な笑みを薄く浮かべた。