准教授 高野先生の結婚

私を見つめる光ちゃんは心ワクワク、瞳キラキラ。

期待に満ちたその表情に、私はふと懐かしい子ども時代のある出来事を思い出した。

それは、私がちょうど今の光ちゃんと同じくらい、たしか小学三年生の頃。

お昼休み、女の子だけでワイワイお喋りしてたときの話。

話題は……自分の両親が新婚旅行で何処へ行ったか、だった。

定番のハワイ、豪華にヨーロッパ、のんびり国内温泉旅行。

だけど――

一人だけ、両親が新婚旅行に行っていない子がいたのだ。

“えーっ!ありえなーい!”

“うそー!なんでー!?”

“かわいそー”

彼女に投げかけなれた数々の言葉。

そんな言葉に肩身を狭そうにする彼女……。

高価な指輪、豪華なドレス、素敵な旅行。

あのくらいの年頃って、結婚に華やかな夢や憧れを一番抱く頃だもの、無理もない。


さて……。


私が婚約指輪は無いと言ったら――

光ちゃんは私のことを可愛そうに思うだろうか?がっかりさせてしまうだろうか?
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