准教授 高野先生の結婚

私が話し終えると、光ちゃんが首を傾げてきょとんと一言。

「ハリコムってなあに?」

愛娘の可愛らしい質問に、ジュンちゃんがにっこり笑ってお答えする。

「張り込むっていうのはね、高くても頑張ってイイ物かうゾ!って奮発することよ」

「フンパツ?」

「たくさんお金を使うこと。光が発表会で着たドレスだってパパが奮発したのよぉ」

「えーっ!」

微笑ましい母と娘のやりとりを、大人たちは目を細めて優しく穏やかに見守った。

そんな中、お母さんが――

「あのね、しーちゃんにちょっと見てもらいたい物があるんだけど……」

「私に、ですか???」

なんだろう?寛行さんの子ども時代のアルバムだろうか?

けど、それにしてはお母さんの言い方が何やら遠まわしな感じだった気が……。

「二階にあるから今取ってくるわね。だから、ちょーっと待ってて」

お母さんはそう言ってウフフと笑うと、ビューンと部屋を出て行った。

はて?私に見せたい物ってなんだろう?

もしや……!!お父さんとお母さんの結婚式の写真とか!?

そうか、だから……なんだかちょっぴり恥ずかしそうに控えめな言い方だったんだ!

そうして私は自分の予想を勝手に正解と断定して、楽しみにワクワク胸を躍らせた。

< 85 / 339 >

この作品をシェア

pagetop