准教授 高野先生の結婚
賑やかな時間は瞬く間に過ぎていく。
時計を見れば、ぼちぼち夕食の準備を始めなければならない時刻。
そして、それは私がそろそろお暇(いとま)をする時刻。
「シオリ殿、まま、もそっとゆるりと」
「しーちゃん、泊まっていけばいいのに」
帰り支度する私を望クンと光ちゃんが引き止める。
その気持ちはすごく嬉しいけれど……。
「ごめんね、ありがとう。でも今日はまだこれからご用事があるから行かないと」
「えーっ!ご用事ってなあに?」
「えと、それはね……」
私が返答に困っていると――
「あれ???ヒロユキの服がちがーう!」
「あっ、寛行さん」
ちょうどそこへ着替えを済ませた寛行さんがやってきた。
「お待たせ。じゃあ、そろそろ出ようか」
「うん」
「光も望もまた今度な。今日はこれから二人で詩織ちゃんちに行かなきゃなんだ」
ご用事というのは他でもない、寛行さんが私の両親に会うご用事。
何を隠そう無謀にも私たちは怒涛の弾丸ツアーを敢行中なのだ。
今日一日でお互いの両親への挨拶(お願い?)を済ませてしまおうという……。
まあ、なんというか――
慌てて日程調整したせいもあるけど、勢いにのって一気に!という気持ちもあり……。
結婚って基本的には計画性と持久力が重要だけど、時として瞬発力も必要らしい。