ちっぽけな空
 翌朝、いつもなら私たちより早起きの祖父が、起きてこなかった。
「昨日、アサコと一緒に居るのが楽しかったのね。
きっと疲れて、ぐーぐーいびきなんかかいて寝てるんだわ」
 母はそう言うと、もう朝ごはんなのにね、とぼやきながら祖父の部屋に行く。
 私は、祖父が飲むだろうと、お茶の準備をしていた。
「ア、アサコ…… 」
 母が私を呼んでいた。
 その声はかすれて、よく聞き取れない。
「お母さん? 」
 私は何か不安な気持ちになって、祖父の部屋を訪ねた。

 今でも、鮮明に覚えている。


   青ザメタ母ノ顔

 目ヲヒライテ、苦シソウニ絶命シテイタ祖父


 私が物心ついたときからあった、微かな不安は、これだったのだと悟った。
 
 全ての生きているものが、死という見えない鎖に繋がっているのだと。
 

 後から聞いた話では、父は心臓発作の持病があったらしく、その日の夜に発作が起こってしまい、運悪く死んでしまったのだということだ。運とか、不運とか、そんなもので片付けていいのかわからないけれど、それはきっと運命なんだろう。
 
 自分にも、遅かれ早かれ、その運命はやってくる。
 私はその時、気づいてしまったのだ。
 逃れることの出来ない鎖があることを。

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