サミシイカラ…ウソツキ
あたしは可愛らしいお揃いのマグカップを手に取り、頭の中を整理しようと必死だった。
すると、玄関から鍵を開ける物音がした。
びっくりして振り返ると
「…………」
やつれた顔のあの彼女がいた。
彼女はあたしの顔を見た瞬間、ものすごい形相で駆け込んできた。
「……触らないでっ!!」
手にしてたマグカップを引ったくり、大切そうにそっと食器棚にしまった。
「あの…あなたは…」
あたしが彼女に声を掛けようとすると、静かな声で
「…座りませんか?立ち話も何ですので…」
彼女に促され、あたしはソファーに腰掛けた。
キッチンでは彼女が手際よくコーヒーを用意している。
…立場が逆のはずなのだが、彼女の凛とした迫力に妻のあたしは完全にお客様状態でいるしかなかった。