Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜

拓也の悩み

グラウンドの赤土で汚れた白球が高々と空に舞い上がる。

身体を斜にし、一心不乱に白球を追い掛ける様はただ「格好良い」の一言に尽きるのは自然なことだと思う。

「オーライ、オーライっと。」

パシッと気持ちの良い皮が弾ける音がして、白球はグローブへと見事に吸い込まれていった。

「さっすがタク。今の本来ならスリーベース級の当りだったぜ。それを捕っちゃうんだもんな。」

キャプテンでピッチャーの佐野くんがわざわざセンターの拓哉の元にまで駆け寄る。

「いや、どうでも良いけどマウンド戻れよ。監督めっちゃこっち見てんだけど。」

「ん?おお、すまんすまん。とにかくナイスキャッチ。」

佐野くんの代名詞は豪快なキラースマイル。

生徒会とか学級長とか色んな立場にたってる佐野くん。

あのキラースマイルを見せられたら頼み事は断れなくなってしまう……不思議。

「なにやっとんだ佐野!!シートノック中にマウンドから離れるヤツがあるかぁ!!」

「す、すんません!!」

案の定怒られた佐野くん。

しっかりもののくせに、ああいう変なところが抜けている……不思議。笑


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