Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
シートノックを終えるとベースランニングを始めた。

ホームベースからファースト、セカンド、サードと周りまたホームベースを踏む。

それを部員全員が間隔もなしに全力で走り続ける光景は、いつみても圧倒されてしまう。

「はぁはぁ、はぁ。」

「はぁ。さすがの拓哉もこれは疲れるんだな。」

「たりめぇだろ。はぁ。全力で何十本も走らされて疲れねぇやつなんかいねぇよ。」

走り終えた部員が息を荒くする。

夕陽に照らされた彼らはスパイクと汗で青春をこのグラウンドに刻んでいくのだ。

「なぁ拓哉。野球部入ってオレ達と本気で全国めざさないか?」

佐野くんからの誘い。

いつものキラースマイルではなく、本当に真剣な眼差しをしていた。


拓哉は申し訳なさそうに目を逸らす。

「わりぃ。オレは部活には入らないよ。」

そう言って拓哉はベンチに戻っていく。

隠しきれない悲しい顔を見せないようにして。

「無理なんだよ……部活なんて……」



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